ウラ歴史(2009~2010年)

リーマンショックの到来によって物流が停滞し、パレット用資材の受注は激減しました。リーマンショックの到来は、私達を地獄の日々から解放する反面、将来への不安を突き付けてきました。

時をさかのぼること数年前、まだリーマンショックの足音すら全く聞こえていない頃、当社はネットショップ「ドットジェイ」を開店します。その発端は、ホームセンターを訪れた際に「なぜ、パイプはこれだけのサイズしか売っていないんだろう?」と思ったからです。私達は日々100種類以上のサイズのパイプを販売しています。ところが、そこにあったのはわずか数種類のサイズだけでした。

そこで「パイプを欲しいと思ったことはない?」と身近な人達に聞いて周りました。ところが、回答は「ない」が100%。ただ、DIYなどをした話を聞いた際に「そこにパイプを使えばいいんじゃない?」と提案すると「そうかも…」と答える人が多い事に気が付きます。要するにパイプの「需要がない」のでななくて、手に入らない前提だから「選択肢にない」ということでした。そこでダメで元々の軽いノリでショップを開店します。

すると、この店舗が予想以上の反響を得ました。今でこそ、様々な企業がネット上でパイプの材料販売を行っていますが、当時は当社の独占販売に近い状態でした。結果、ダメ元で始めた店舗が毎年150%以上の成長を続け、わずか数年で黒字化します。そして、この店舗の存在が、その後の当社の成長に大きな影響を与える事となります。

ネットショップを構築する過程で最も悩んだのが「価格設定」です。業界の慣習でもある相場価格に慣れ親しんでいた私達は、それまで値付けに悩むことがほとんどありませんでした。しかし、ネットショップの顧客は鉄のことを全く知らない人達です。業界の慣習に関係なく、「買ってもらえる価格」を提示しなくてはなりません。そのため、価格決定の思考をプロダクトアウト型からマーケットイン型へ反転させる必要がありました。「買ってもらえる価格」は、必ずしも低価格とは限りません。「価格=価値」もしくは「価格<価値」であることが需要です。恥ずかしながら、それまではそのようなことを考えた事もなく、逆にそれが普段の商売を見つめ直すきっかけとなります。

売上を確保するためにどのような仕事も引き受ける日々が続く中で、いつの間にか受注内容が少ロット多品種化していきます。それまでの流れであれば、手間暇がかかる少ない受注に振り回されてジリ貧になっていたのでしょうが、ネットショップ開設の経験を糧に少ロットでもきっちりと利益を得る方法を確立することが出来ていました。また、「今後は以前のような状態に戻ることはない」と考え、工場のレイアウトを量産対応型から少ロット対応型に変更します。このレイアウト変更は工場の中身を丸々90°回転させる大掛かりな変更でしたが、この時に工場移転時の反省とノウハウが活かされます。また、このレイアウト変更の経験がその後の「flexible layout system(*1)」を可能にしました。(*1 受注状況に合わせて工場内のレイアウトを柔軟に変更するシステム)

結果、リーマンショックの翌々年(2010年)には経常利益がリーマンショック前まで回復し、それまでとは全く違う形で事業が成り立つようになりました。

量産重視(左)から単品重視(右)にレイアウト変更

また、同時に危機感を募らせた20~30代の社員が中心となり、今後の成長に向けた10年計画を作成します。10年後(2020年)の売上目標を約2倍(2009年比)、利益目標を約10倍(2009年比)とする野心的な目標を実現するために3年毎にクリアするべきステージを設定して、レイアウトだけでなく、社内システム、顧客ターゲット、受注内容、加工レベル、品質意識など、ありとあらゆる分野を見直しました。

その意識改革が次のステップへと大きく繋がります。

つづく

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