ウラ歴史(2011~2019年)

少ロット多品種の受注が順調に増えていく中で一つの問題が浮き彫りになってきます。それは「横持ち」です。横持ちとは、工程から工程へ移る工程間の移動作業のことです。当時、当社では切断加工以外の加工をほぼ外注で行っていたため、複雑な加工(穴あけ・曲げ・溶接・溶断など)を行う際は、外注先へ材料を移動させる横持ち運搬が多発していました。これを解消するために取り組んだのが社内加工の拡充です。ところが、ここで「人・モノ・金」の壁が立ちはだかります。

当初、高価な工作機械を購入する資金もなく、職人を雇うほどの安定した仕事量もなかった為、まずは安い中古機械を購入し、自分達で加工にチャレンジすることから始めました。ただし、素人が加工を行うため「出来ること」と「出来ないこと」の区別が曖昧です。また自分達と年齢が変わらないような古い機械を購入していたために説明書が付属されていない事が多く、機械の操作方法も手探りな上に加工の許容スペックも全くわからないままでした。その上、研究開発をしてから受注活動を行う余裕は全くなく、「とりあえず受注してからやり方を考える」有様でした。結果、夜な夜なクラブ活動のノリでチャレンジを繰り返す日々が続きます。

そのような日々が続く中、「この加工、本当にできますか?」と不安そうに質問をするお客様が現れます。いつものノリで「できますよ!」と答えても「本当にできますか?」と返してきます。どうやら、それは通常の機械のスペックでは加工できないものでした。ところが、私達は説明書も読んだことのない素人です。オーバースペックな加工も機械を改造して出来るようになっていました。

その風習が「機械に合わせて仕事をする」のではなく「仕事に合わせて機械を使いきる」文化へと繋がります。今では中古機械を購入する機会が減りましたが、新規に工作機械を導入する際は当社仕様に改造してもらうのは当たり前。また意図する機械を販売していない場合は、自ら機械を製作することもありました。その結果、工作機械のスペックを使い切ることができ、他社では困難な加工も出来るようになっています。

チャンネルの鋭角(30°)切断 ※ロボットプラズマ溶断

そのような受注を続けているうちに「エーティーケーなら何とかするんじゃないか?」と言ったイメージが付き、お客様自身が出来るかどうかわからない加工の見積をどんどん当社に投げかけてきてくれるようになりました。仮にできない場合でも、加工できない理由を説明する事で仕様変更や設計変更に繋がり、場合によっては設計段階からご相談をいただく事例も出てきました。

この「とりあえずやってみる文化」は、その後の成長に大きな影響を与えます。ある時は某メーカーとの新製品共同開発。ある時はさわった事もない材質の材料加工。ある時はOEM生産引受など…。その都度、失敗を恐れずにチャレンジし続けた結果、2010年に設定した売上と利益の数値目標を1年前倒しで達成することができました。また、そのような雰囲気が社員のモチベーション向上に繋がり、離職率もほぼ0%になり、社員数も順調に増えてきました。

つづく

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