そのパイプ、どの「規格」で頼む? ―SGP・STK・STKM・STKR・SUSの使い分け
2026年10月12日|ATK blog weekly
執筆:ATKブログ編集部|金属素材を扱う現場の視点でお届けしています
この記事の結論(先にお伝えします)
鋼管の規格は「強さの順位」ではなく「使い道」で分かれています。ざっくりの目安は、水やガスを流す配管ならSGP、足場や鉄塔など建築・土木の骨組みならSTK(角形はSTKR)、曲げや溶接など加工が多い機械・家具のフレームならSTKM、サビを嫌う水まわり・屋外ならSUS。発注時は「用途・中身や圧力・必要な強度・寸法・数量」を伝えると一気に決まります。
3行でわかる要点
- 規格は「用途(使い道)」で分かれている。高い規格=良い、ではない。
- 規格名がわからなくてもOK。用途を伝えれば最適な規格をこちらで選べる。
- 同じ寸法でも規格が違えば、強度・コスト・加工のしやすさが変わる。
先日、「鉄パイプをください、サイズはこれで」というお問い合わせをいただきました。ありがたいお話なのですが、実は「鉄パイプ」と一口に言っても、JIS(日本産業規格)で用途ごとにいくつもの種類に分かれているんです。カタログを見ると SGP、STK、STKM、STKR、SUS……とアルファベットが並んでいて、「結局どれを頼めばいいの?」と迷ってしまう方は少なくありません。今日は、現場でよく使う代表的な鋼管の規格を、できるだけやさしく整理してみます。
なぜ鋼管には「規格」がいくつもあるの?
理由はシンプルで、パイプに求められる役割がそれぞれ違うからです。水やガスを漏らさず流したいパイプと、建物や足場を支えたいパイプ、機械のフレームとして曲げたり溶接したりするパイプでは、必要な性能がまったく別もの。そこでJISでは「配管用」「一般構造用」「機械構造用」といった具合に、用途別に規格を分けています。
ここで大事なのは、「規格に上下の順位があるわけではない」ということ。高い強度の規格を選べば万能、というものではなく、使い道に合っているかどうかが正解を決めます。配管用のパイプを無理に構造材に使ったり、その逆をしたりすると、コストも性能もちぐはぐになってしまうんですね。
代表的な5つの規格、何がどう違う?
SGP(配管用炭素鋼鋼管/JIS G3452)は、いわゆる「ガス管」として知られる配管の定番です。使用圧力1.0MPa以下の蒸気・水(上水道用を除く)・油・ガス・空気などを流す用途向け。入手性がよくコストも手ごろなのが利点ですが、高い圧力や大きな強度を求める構造物には向きません。
STK(一般構造用炭素鋼鋼管/JIS G3444)は、土木・建築・鉄塔・足場・くい・支柱など「支える」ための構造用パイプ。たとえばSTK400は引張強さ400N/mm²以上・降伏点235N/mm²以上と強度がはっきり決まっているのが安心材料です。一方で、流体を密閉して流す配管の性能を保証する規格ではありません。
STKM(機械構造用炭素鋼鋼管/JIS G3445)は、加工性の高さが身上。機械・自動車・自転車・鋼製家具などのフレームによく使われ、曲げや溶接といった加工を前提にした製品に向いています。ただしグレードの幅が広く(たとえばSTKM11Aは引張強さ290N/mm²以上)、強度は等級の指定が必要です。
STKR(一般構造用角形鋼管/JIS G3466)は、STKの角パイプ版。建築構造・梁・フェンス・ガードレールなど、面で固定したり納まりを重視したりする構造に活躍します。用途は構造寄りが中心です。
SUS304など(ステンレス鋼鋼管/JIS G3446・G3459)は、耐食性・耐熱性・極低温特性にすぐれ、水まわりや屋外、衛生用途で頼りになります。その分、材料コストが高めで、溶接などの加工にも手間がかかる点は織り込んでおきたいところです。
ひと目でわかる比較表
| 規格 | 正式名称(JIS) | 主な使い道 | 強み(利点) | 気をつける点(欠点) |
|---|---|---|---|---|
| SGP | 配管用炭素鋼鋼管(G3452) | 水・ガス・空気などの配管(1.0MPa以下) | 定番・入手性◎・コスト◎ | 高圧・高強度の構造には不向き |
| STK | 一般構造用炭素鋼鋼管(G3444) | 足場・鉄塔・支柱などの構造物 | 強度が規格で明確(例:STK400) | 流体を密閉する配管用途ではない |
| STKM | 機械構造用炭素鋼鋼管(G3445) | 機械・自転車・家具などのフレーム | 加工性が高い(曲げ・溶接向き) | グレードで強度差が大きく要指定 |
| STKR | 一般構造用角形鋼管(G3466) | 建築・梁・フェンス・ガードレール | 角形で納まり・固定がしやすい | 用途は構造寄りが中心 |
| SUS304 | ステンレス鋼鋼管(G3446・G3459) | 水まわり・屋外・衛生用途 | 耐食・耐熱にすぐれる | コスト高・加工に手間 |
※強度の数値はJISに基づく代表値です。グレードや寸法によって変わるため、詳細は一般にミルシート等の一次情報でご確認ください。
発注時に伝えると早い「5つの情報」
規格名がわからなくても心配いりません。次の5つを教えていただければ、最適な規格・材質・加工方法まで一気に絞り込めます。
①用途(何に使う? 配管か、骨組みか、機械部品か)/②中身と圧力(流体なら何を・どのくらいの圧で流すか)/③必要な強度・荷重(どれくらい支えるか)/④寸法(外径×肉厚×長さと公差)/⑤数量と希望納期。この5点がそろえば、やり取りがぐっとスムーズになります。
「高い規格=良い」ではなく、「使い道に合う規格=正解」。ATKは少量多品種・複合加工を得意としていますので、規格選びから切断・曲げ・溶接まで、まとめてご相談いただけます。迷ったら、まずは「こんなものを作りたい」とだけ伝えてください。そこから一緒に最適解を探します。
よくある質問(FAQ)
Q. SGPとSTKは、見た目は同じ鉄パイプなのに何が違うの?
A. 想定している使い道が違います。SGPは水・ガス・空気などを「流す」配管用、STKは足場や鉄塔などを「支える」構造用です。同じ寸法でも、果たす役割と保証される性能が異なるため、用途に合わせて選ぶ必要があります。
Q. どの規格かわからないときは、どう頼めばいいですか?
A. 規格名がわからなくても大丈夫です。「何に使うか(用途)」「流す中身や圧力」「必要な寸法」を教えていただければ、最適な規格・材質をこちらから提案します。まずは作りたいものを伝えてください。
Q. ステンレス(SUS)は錆びにくいから、全部これにすれば安心ですか?
A. SUSは耐食性にすぐれますが、材料コストが高く、溶接など加工に手間がかかります。屋内の構造物など錆の心配が少ない場所では、STKやSTKMのほうがコスト・加工性で有利なことも多いです。場所と用途に合わせた使い分けがおすすめです。
