本日、新日鉄住金が日新製鋼を買収する発表をいたしました。
この動きは、今の鉄鋼業界が置かれている現状を如実に表していると思います。
と言うのも、新日鉄と住友金属が統合する当初の建前は、世界市場での競争力を身に着ける事にあると言われていました。
ところが、実態は国内において影響力を発揮するだけの結果に陥っています。
実際、その影響力は非常に大きく、関西地域の高炉系の鋼管専業問屋の大多数が新日鉄住金の専門問屋になってしまいました。
形鋼関連は鉄鋼専業業商社や大手鋼材問屋の頑張りもあり、そこまでには至っていませんが鋼管関連はほぼ独占状態です。
その結果、関西地区の鋼管業界では統合のメリットは全く感じられません。
むしろ価格保護の圧力が強くなり、流動性を失っている側面が強く出ています。
また、大手鋼管問屋もライバル企業同士の仕入れ先が被ってしまい、企業の特色を出す事に四苦八苦している様子が見受けられます。
最終的に「市場圧力 vs 価格保護圧力」の決着がどうのようになるかは、推して知るべしと言ったところでしょうか。
このような動きは、統合が決まった当初から懸念していました。
※2012.11.22 ブログ「誰がために鐘は鳴る?」
結局のところ、顧客の利益を優先した統合でなかったために保守的な動き中心になってしまい、重複資産の解消を終えた後は利益の出し処が明確になっていません。
ここ数年、高炉メーカーは電炉メーカーの品質向上の追い上げを避ける形で、利益の源泉を自動車用鋼板などの高級品市場へとシフトしていました。
しかしながら、電炉メーカーの技術進歩も目覚ましく、どこまで高級品市場に食い込むのか?が注目されています。
現在のところ高級品市場においては高炉メーカーが優位な立場にありますが、鉄以外の材料の進歩も無視できないので予断を許さない状況は続くと思われます。
また、近年の中国鉄鋼メーカーの台頭も大きな影響を与えています。
単純に中国の粗鋼生産量の増加だけではなく、技術進歩も無視できません。
その結果、新日鉄住金のグローバル戦略は足止め状態となり、継続的に吐き出される高炉品の受け入れ先確保に奔走しているように感じます。
高炉メーカーの苦悩は国内の系列企業への影響も大きく、ネガティブな再編が続くことになるかも知れません。
その影響は国内の製造メーカーにもネガティブな影響を与える可能性が高いため、結果として海外への工場移転の話が再燃するでしょう。
また、国内の人口動向を加味しても今後の鉄の消費減少は否めません。
当然、世界全体を考えれば需要は増えるでしょうが、海外の価格競争の熾烈さは国内の比ではありません。
結局、進むも戻るも悩みは尽きない状況と言えるでしょう。
今後、自分達が国内に留まるのであれば、国内需要が現在の半分になっても生き残る事ができる戦略を構築する必要に迫られていると感じました。
k.yamatani