誰がために鐘は鳴る?

10月1日に新日本製鐵と住友金属が合併して、新日鐵住金が誕生しました。

 

誕生を機にさまざまな統合効果を伝えるニュースが鉄鋼業界を賑わしています。

 

合併により、資産や負債の圧縮効果によりに数千億円の利益が発生など・・・。

 

ただ、合併による相乗効果は期待できるのでしょうか?

 

相乗効果とは、「1+1」=「2」が「3」や「4」に化ける事をいうと思います。

 

ところが伝えられるニュースは、ほとんどがコストダウンで発生する利益の話ばかり・・・。

 

 

今回の合併の目的は、世界市場において規模の経済を働かせる事にあると言われていますが、圧縮効果以外のメリットを出すのは非常に難しいと思います。

 

なぜ、そう感じるのか?と言うと、今回の統合が顧客の方を見て行われた統合ではなく、自分達の方を見て行われた統合だからです。

 

簡単に言うと、新日鐵と住金が統合することによって顧客が得るメリットが伝わってきません。

 

顧客にとっては、両者が統合することによって仕入先が重複して価格の主導権を失ったり、問題発生時のリスクが増大するなどデメリットの方が大きいと思います。

 

新会社にとっては、統合当初は市場シェア拡大により価格をコントロールする力が付くかも知れませんが、それは一時のことだと思います。

 

あくまで価格を決めるのは市場であり、メーカーでもユーザーでもないからです。

 

 

何事においても、顧客に対してメリットを提供できなければ市場において優位な存在であり続けることは難しいと思いますが、今の時代、そのメリットの示し方が非常に難しくなっていると思います。

 

単純に「規模の大きさ」や「名前が通っている」と言う理由だけでは、顧客は反応しません。

 

極端に言えば、「価格が安い」「機能が良い」「デザインが良い」と言う条件を揃えても難しいと思います。

 

インターネットの普及によって、ある意味情報過多になっているので、簡単に耳目に触れる情報に対して不感症になっている感じです。

 

では、何に反応するのか?

 

おそらく、5感(もしくは6感)をフルに総動員して「良い」と感じる事に対して反応するのだと思います。

 

例えば、iPhoneがなぜ売れるのか?

 

CMやカタログを見ても、他社の製品と特別に何かが違うとは感じません。(←コレが不感症?)

 

ただ、それを手にした人からは何か特別な物を手にしたかのような反応を感じます。

 

アップルが、iPhoneを通じて顧客に何を提供しているのか?と考えた時に、その答えがあるような気がしました。

 

 

新興国の発展により市場が膨張するのと同時に情報の氾濫と民族主義の台頭によって市場が細分化されていく世界において、規模の経済を求める合併にどんな意味があるのか?

 

そして、顧客にどんな満足を提供するのか?

  

それを示す事ができた時、この合併に意味があったのだと感じさせてくれるのだと思います。

 

本当の狙いはどこにあるのか? 今後の展開が楽しみです。

 

k.yamatani