経営学者のマイケル・E・ポーター教授が開発した経営分析のフレームワークにファイブフォースと言うものがあります。有名なフレームワークなので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
簡単に説明すると企業の競争環境には5つの脅威があるとされています。新規参入の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力、代替品の脅威、競合企業の脅威です。
この中で新規参入と競合企業の脅威はわかりやすいと思います。売り手の交渉力とは、いわゆる仕入先からの値上げ交渉やサービスの変更がこれにあたります。逆に買い手の交渉力とは、顧客からの値下げ依頼などがこれにあたります。この4つの脅威は普段の環境で触れる事が多いと思うのでイメージを浮かべやすいと思います。
そして、一番厄介なのが代替品の脅威です。なぜ、厄介なのかと言うと、これが訪れると利益が減少するだけではなく、売上そのものが吹き飛ぶ可能性が高いからです。
例えば、スマートフォンの存在です。以前から使用されていた携帯電話のガラケーに対して、スマートフォンの登場は新規参入にあたりますが、これに様々な機能を付加されたことにより煽りをくらった業界が多発しました。まさか、携帯電話の革新がカメラやパソコンだけでなく、書籍や広告など一見何の関係もない業界に大きな影響を与える事になると想像していた人は少なかったと思います。
そこで先日発表されたApple製品の登場です。その中でもAirPodsという製品の改良が思わぬ業界に影響を与えそうです。
Appleの「AirPods Pro 2」、FDAの市販補聴器ソフトの認可取得
もともと補聴器は医療機器であるためニッチな業界でした。そのため価格競争が少なく、安定した収益を得ている企業が多かったと思います。そこに通常使用できるイヤホンが参入する事になりました。いわゆる、イヤホンのスマホ化です。高性能で補聴器を付けている引け目を感じる事もない商品の登場は、市場に大きな影響を与えるかも知れません。これだけでなく、Apple製品は医療機器の業界をどんどん脅かせています。
今回は医療機器業界の話でしたが、古くからある産業や業界ほど現在のテクノロジーや技術をあてはめると簡単にひっくり返りそうなネタがたくさんあります。
常識にとらわれずに柔軟な思考で自らを変革していく力が問われています。