作家の司馬遼太郎さんがある本の中で文明と文化の違いについてこのようにふれています。
「文明」:普遍的なもの・合理的なもの・機能的なもの
「文化」:不合理なもの・特定の集団(たとえば民族)においてのみ通用する特殊なもの・他に及ぼしがたいもの・普遍的でないもの
例えば、企業活動において営業手法、設備投資、作業効率の改善などノウハウを容易に横展開できるものは「文明」と言えると思います。
逆に企業に根付いている習慣、人間関係、雰囲気、社員の意識など簡単に他社が模倣できないものが「文化」になります。
個人的な考えとして、利益を生み出す過程が文化に紐付いている企業は収益性が高く、市場の変化に対して粘り強く生き残る確率が高いと感じています。なぜなら普通であることが、利益に結び付く活動だからです。そのため余計なエネルギーを使うことなく、粛々と改善を進めながら生き残っている感じがします。
それに対してノウハウや設備に依存が大きい場合、対応が朝令暮改に成り易く何をやっているのかわからなく成ることが多々あります。その上で企業の改革を経営コンサルに委ねたり、自社の文化に合わないオーバースペックな設備を導入するなど、非常に大きなエネルギーを使うパターンが多く見受けられます。結果、一次的に利益を上げることが出来ても、それを継続する事が難しくなります。
得てして、文明は発散し崩壊しやすいので、安易にそこに答えを求める事にはリスクが伴います。そして、自社の文化に合わない文明をそのまま導入する事は、不要な混乱を招くことに成り兼ねません。
他社が上手く行っていることを自社に取り込む際は、上辺の部分(文明)だけを見ずにそれが上手く出来ている背景(文化)にも注目して、自社の文化に合うものかどうかをよく吟味した方が良いのではないでしょうか?
企業の文明は経営者の思考を反映しますが、文化は経営者の思想を反映すると思います。
日々、脚下照顧の気持ちを忘れないことが大事なのでしょう。