蛇足

「楚に祠る者有り。其の舎人に卮酒を賜ふ。舎人相謂ひて曰はく、「数人にて之を飲まば足らず、一人にて之を飲まば余り有り。請ふ地に画きて蛇を為り、先づ成る者酒を飲まん。」と。一人の蛇先づ成る。酒を引きて且に之を飲まんとす。乃ち左手にて卮を持ち、右手にて蛇を画きて曰はく、「吾能く之が足を為る。」と。未だ成ざるに、一人の蛇成る。其の卮を奪ひて曰はく、「蛇固より足無し。子安くんぞ能く之が足を為らんや。」と。遂に其の酒を飲む。蛇の足を為る者、終に其の酒を亡へり。」

絵の上手い人が「自分は蛇に足を書き足す事ができる」と自慢して描いたところ、周りから「それはそもそも蛇じゃないじゃん!」と指摘される有名な話です。

先日起こった話はこれに近い話かもしれません。

トヨタ、過信が生んだ法令軽視 情報共有進まぬ風土(2024年6月4日 日本経済新聞)

自動車の認証手続きを行う際に「法規よりも厳しい自社の品質基準」で行っていたために法令違反を指摘された話です。

正直、何が問題なのかわからなくなりますが、おそらく「法」というもの自体の解釈が重要になってくるのだと思います。

例えば、道路を60km/h以下で走行しなさいという標識があった場合、5km/hで走行しても良いのか?という問題です。

おそらく、直感では人によって正否の判断が割れます。ただ、「法」は基本的に誰がどこから見ても「正」ではないと成立しないと考えれば、判断の正否が分かれる状況は「否」です。

ただ、今回の話は「法」を軽視されたことに対する見せしめの意味も含んでいる気がしないこともないですが…。

製造業界に携わる者として、一日でも早い正常化を望みます。