最近の工作機械は進歩が目覚ましく、複雑な加工をいとも簡単に行ってしまいます。
当社にもここ数年、自動制御できるCNC工作機械が増えてきました。そんな中、思いもよらない問題が浮上して、あらためて職人の重要性を認識する事がありました。
例えば穴加工を行う場合、手動で加工をしていた時代はドリルの刃が悪いと加工が思うように進まなくなるため、職人の育成は、まずドリルの刃を研ぐ技術を身に付けることから始めます。そして、まともに刃を研ぐことが出来るようになって初めて機械をさわらせてもらえるようになりました。
ところが、現在の工作機械はパワーがあるので多少刃の状態が悪くなっても加工を行えます。また、刃を自動で研ぐ機械も導入した結果、誰でも機械を動かす事が出来るようになりました。
ただ、そこに落とし穴がありました。
悪い刃で加工を行うと機械に負担がかかります。機械は「苦しい…」とは言わないので、いずれ故障します。また、それに伴い精度も狂い始めます。
以前、穴ズレのクレームが発生した際に機械の故障が原因だと考えていました。ただ、あまりにも頻発するので最初の工程から見直したのですが、それでも原因がわかりません。そこで、たまたま職人の一人がドリルの自動研ぎ機を確認した際に設定がズレて刃がキレイに研げていない事が分かりました。要するに作業者が刃の状態の悪さに気付かず、そのまま加工を行っていたのです。
今の時代、職人がいなくても作業はできます。
ただ、職人がいなければモノの良し悪しがわかりません。
その損失は、会議室ではわかりません。
加工の隠し味を見抜ける人が現場には必要です。