今年の春から夏にかけて、日本の音楽業界では大きな変化がありました。
皆さんもよくご存知だと思いますが、それは、音楽の定額配信のスタートです。
海外では少し前から行われていたことなので、日本に導入される日を心待ちにしていた方も多かった思います。
実際に私も使用してみたのですが、自分の好みに合わせて楽曲を提案される手法が新鮮でした。
おかげで今まで知らなかった楽曲にふれる機会がかなり増えて、「古い曲」を新しく聴く機会が増えました。
音楽業界の中では定額配信について賛否両論あったようですが、埋没した商品を掘り起こすという意味では、大きな成果があるように思えます。
そういった意味では、古い楽曲をたくさん抱える大手のレーベルにこそ、このシステムが向いているのかも知れません。
ちなみに私は今回の音楽業界の変化について非常に興味を持っています。
なぜなら音楽業界の変化は、世の中の環境の変化のキッカケになる事がよくあるからです。
例えば、レコードからCDへの情報のデジタル化。
また、ウォークマン等による家電のコンパクト化。
そして、iPodとiTunesの連携によるハードとソフト(ネット)の融合。
これらの変化で注目するところは、一つ一つの変化が業界の構造を大きく変えてしまっただけでなく、人々の生活環境も大きく変えてしまった事です。
そして、音楽の定額配信。
「定額配信」という言葉からは「定額」に注目が行きがちですが、要は情報の「共有(シェア)」です。
今回は、劣化しないデジタル情報だからこそ成り立つビジネスモデルかも知れませんが、おそらく、1つの物を複数人で共有(シェア)する動きへの変化は、あらゆる分野に波及していくと思われます。
「定額」の名のもとに自動車・自転車・住宅など、あらゆるハード商品がシェアされる時代になった時こそ、本物の「大量消費時代の終焉」です。
国内の市場においては、そこに人口の減少が拍車をかけるかも知れません。(むしろ、人口の減少が商品の共有文化を推し進めるかも知れませんが…。)
仮にこの変化が装置産業全体に影響を及ぼす状況になれば、あらゆる企業が合併や合従連衡によって固定費の削減や重複設備の解消に追われるでしょう。
その際には、今までの市場縮小とは比べ物にならない急激な変化が起こってくるのではないかと感じています。
ただ見方によっては、この急激な変化が起こる予兆はすでに少しずつ起こっています。
今起こっている変化を敏感に読み取って、将来に向けて徐々に企業形態を変化させていけば対応は充分可能だと思います。
その先例となりそうな音楽業界の動きをどう捉え、どう生かすのか?
今まさに経営者の手腕が問われる時代に突入しています。
k.yamatani