先日、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が来日して、チョットしたフィーバーが起こりました。
彼が提唱する内容は連日テレビや新聞・雑誌で取り上げられたので目耳にした人も多いと思います。
簡単に言うと、こういう事です。
r(資本収益率) > g(経済成長率)
要は、資産を運用して得る利益と働いて得る所得では、資産を運用して得る利益のほうが大きいという事です。
ただ、普通に考えて、給料を支払う側が満たされていないと社員の給料を上げるとは思えないので、給料を支払う側の心理から考えると何となく腑に落ちます。
特に株主が強い欧米諸国では、その傾向が強いと思われます。
結局のところ、「利益の配分は発言力が強い側に引っ張られる」だけの話だと考えれば、それほど革新的な公式だとは感じません。
むしろ、その関係性よりもそれぞれの伸び率の違いが格差を生んでしまう事に問題があります。
この理論は主に個人の経済格差が発生する根源として取り上げられているのですが、企業においても同じことが起きています。
例えば、積極的に資本を展開して世界規模で拡大している企業と国内に留まっている企業の格差です。
国内に目を向ければ、大手企業・下請け企業・孫請け企業の企業間格差も資本力が大きい大手企業と資本力が小さい孫請け企業の格差は広がる一方です。
大手企業には比較的発言力のある労働組合もあるので、賃金に対して発言力を持たない零細企業社員との賃金格差も広がっていると思います。
また、大手企業の下請け企業や孫請け企業は、上位の企業から年々強制的なコストダウン要請を強いられている企業関係もあると聞いています。
その結果、改善や経験による効率化によって浮いた利益は、ほぼ全て上位企業に吸い上げられる構図になってしまっています。
従って、それらの企業では給料を上げる余地がほとんどありません。
結果として、資本力のある企業と資本力のない企業の格差は広がる一方です。
ただ、企業格差は企業努力の差の側面もあるので、全てに問題がある事だとは言い切れません。
また、企業方針として規模の拡大を望まない企業もたくさんあります。
企業努力や企業方針とは別に格差を生み出す要因があるとすれば、ピケティの理論は企業間格差にも当てはまるのかも知れません。
ピケティが提起した資本主義経済の欠点を改善する為に「政策で格差を解消できないか?」という考え方が一つのテーマとして取沙汰されています。
ただ、彼が提起した欠点は資本主義の欠点ではなく、むしろそれを運用する人間の欠点ではないかと思います。
富に対する人間のエゴが格差を生み出し、強いものと弱いものを生み出してしまっている。
それが顕著に表れてしまうのが資本主義経済なだけで、そのシステム自体はそれほど問題があるとは思いません。
例えるなら、スピードがよく出る車に乗った運転手がスピード違反をした時に「スピードが出る車が悪んだ!」と言っているようなものです。
そのように考えれば、その場しのぎの政策よりもむしろ幼少期からの教育の方が重要なのではないでしょうか?
また、この理論は資本収益率がマイナスになる時、公式が成り立たなくなる場合があります。
資本収益率がマイナスになる時とは、どんな時か?と考えると、世界的に資産の暴落が起こった時です。
どのような時に資産の暴落が起きてしまうのか?と考えれば、一番わかり易いのが戦争です。
今、世界で起こっている戦争やテロなど、その根源の一つに資本主義が生み出す人間のエゴがあるのであれば、復讐の連鎖を止める方法は別にあるのかも知れません。
本の内容に賛否両論ありますが、ピケティが提唱した問題が資本主義経済見直しのキッカケになった事は間違いないと思います。
いつの日か、貧困と差別がベースになった戦争やテロがなくなることに資本主義経済が寄与できることを願いたいと思います。
k.yamatani