安い労働力を求めてさまよう企業の代償

最近、身近な所でも人手不足の話題を耳にすることが多くなってきました。
以前から、飲食店や土木・建設業の人手不足は耳にしていましたが、製造業の現場でもチラホラ出てきているようです。

 

その影響なのか?大手製造業の下請け企業内で行っていた仕事の見積依頼が舞い込むことが多くなってきました。
そして、いつもの感覚で見積を提出するのですが、案の定、単価が全く合いません。

 

基本的に下請け企業で流れている量産の仕事は、コストダウンを追求し切っている仕事が多いと思います。
そのコストダウンがレイアウトや工程変更の範囲で収まっていれば問題ないのですが、人件費にまで踏み込んでいる面も多々あるように感じます。

 

※ある企業の資材担当者は、作業コストを40円/分で設定していると話していました。
 ちなみに労働生産性の大企業平均は約120円/分、中小企業平均が約60円/分になります。

 

「労働生産性=付加価値額÷従業員数」
(簡単に言うと、従業員1人当たりが稼ぎだす金額です)

 

そして、更なる安い労働力を求めて海を越えて行っていった仕事もたくさんあります。

 

しかし、近年、その流れにも限界が生じてきています。
一番の理由は中国の経済成長ですが、そこに政治的な問題も絡まって海外での製造は非常にリスクの高いものとなってきました。
そこで、「製造業の日本回帰」と銘打って、各社が再度国内に仕事を呼び戻しているようなのですが・・・

 

企業において労働力は資本です。
レイアウトや工程変更で無駄を排除して発生させる利益とは違って、人件費を削減して発生させる利益は単なる投下資本の目減りです。
そして、投下資本の減少は、成長の鈍化を招く可能性が高くなります。
生産現場の技術継承の問題や若い人材の確保難など、影響がジワジワ出ているのではないでしょうか?
少ない資本で大きな利益を上げることは会社経営の重要な課題の一つですが、あくまで理念に沿った行動を取る事が大前提になるのではないか?と思います。

 

 

実は、弊社の場合も数年前から中国人実習生を受け入れています。
正直申しまして、開始当初は単に安い労働力を求めていた事は否定できません。
しかし彼らと共に働くうちに、日本での短い実習期間の中で得たものが「お金だけ」では、彼らが働く場所は別にこの会社でなくても良かったのではないか?と考えるようになりました。

 

実際、彼らからすれば、そうだと思います。
ただ、3年間彼らがこの会社にいた結果、そう思うのであれば、他の従業員にとっても同じ事が言えるはずです。

 

そこで、実習生を単に安い労働力として扱うことをやめました。
今では、共に同じ仕事をする中で能力に応じて立場を与え、待遇や査定も日本人同様に行います。
また、定期的にキャンプや飲み会などでお互いの交流を深くして、この会社の文化を受け継いでもらっています。

 

安い労働力を前提とした仕事は、結局、次に繋がる物が何も残りません。
それは、外国人実習生に限らず、極端に安い賃金で働かされている日本人にも言えることだと思います。

 

会社の業績や規模に関係なく、結局は、その会社の末端で働く人達の笑顔が、その会社の将来の価値を表すのではないでしょうか?

 

K.yamatani