下町ボブスレー

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「下町ボブスレー」(著者:伴田 薫 NHK出版 2014年1月初版)という本を読みました。
東京都大田区の複数の中小企業が共同で、国産のボブスレーを作って、オリンピックに出場しよう、という挑戦を記録したノンフィクションで、モノ作りに興味がある人には面白いのではと思います。

 

熱く盛り上がったソチオリンピックも幕を閉じましたが、冬季オリンピックの競技の1つに「ボブスレー」という競技があるのを御存知ですか?
氷で固められたコースを、最高時速140kmものスピードを出す、動力を持たない「ソリ(=ボブスレー)」に2人4人が乗ってそのタイムを競うという、日本ではかなりマイナーな競技です。
しかし欧米では、レースになれば会場に大勢の観客が詰め掛ける花形スポーツで、「ソリ」の開発では「フェラーリ」や「BMW」などの企業がサポートするなど、強豪国間では熱いメダル争いが繰り広げられているようです。

 

日本も1972年の札幌大会からずっと出場はしているものの、「ソリ」の性能が違いすぎて勝負になりません。
「ソリ」作りのノウハウはどの国でも徹底的に秘密とされ、片や日本には国産のソリがないため、外国から型落ち(中古)のソリを買って、それで出場するしかないのが強豪国に歯が立たない大きな原因の1つと考えられているそうです。

 

それなら国産のソリを作ってオリンピックに出場しようじゃないか!
そして大田区の中小企業の力をアピールして、大田区を盛り上げていこう!
とモノ作りの中小企業が密集する東京都大田区の1人の職員が考えたところから、大田区の中小企業を中心とした「下町ボブスレープロジェクト」が発足します。
プロジェクト始動後は、ソリの開発ノウハウや部材の加工技術の不足、短納期や頻繁な設計変更への対応、資金不足といった様々な困難に遭遇しながらも、多くの企業や大学などの協力を得ながら、オリンピック出場を目指してプロジェクトメンバーが「ソリ」の開発に奮闘する経過が記されています。
手探りの中で、様々な特色を持った企業が力を出し合って一つの形のあるモノを創り上げていく過程に、読んでいてぐんぐんと引き込まれました。

 

非常に惜しいところまでは行ったのですが、残念ながら「下町ボブスレー」はソチオリンピックには採用されませんでした。しかしプロジェクトメンバーはもう4年後の平昌オリンピックを目指して活動を続けています。
日本の中小企業の底力を世界に見せ付ける為にも、プロジェクトメンバーの皆様には、是非とも頑張って欲しいと思います。

なお「下町ボブスレー」がNHKでドラマ化されて、3月1日、8日、15日の連続3回でBSプレミアム(午後9時~9時55分)で放送されます(こちらは実話を基にした、あくまでもフィクションです)ので、興味のある方は是非。

 

M.Kato