前提の基準

福島の原子力発電所の事故以来、各地域の原子力発電所の再稼働が滞っています。
そんな中、東京電力をはじめ、原子力発電に発電量を一定量依存してきた地域の電力会社が節電を呼びかけはじめました。
  
「余剰電力が少なくなっているので、節電に協力してください!」
  
最近、ニュースなどでよく聞くこのセリフ・・・・何かおかしい???
  
  
通常、民間企業の考え方では、可能な限り在庫を少なくして適正在庫を設定します。
適正在庫の度合いは業態によって様々ですが、基本的に青天井ではないと思います。
もし在庫が少ない場合は、同業他社から融通したり、お客さんに納期を待ってもらったり、受注量を減らしてもらって調整するなど、その行為は、あくまでお客さんとの折衝の中で詰めていく話であって、お互いが納得するために最善の努力をしていると思います。
  
それを前提に最初の言葉を聞いた時、何かがおかしいと感じました。
  
当然、節電を行うことはいい事です。
ただ、あまりにも一方的な発信は原子力発電所の稼働の可否だけに焦点が絞られた言葉に感じられ、まるで原子力発電を稼働するための言い訳にしか聞こえませんでした。
  
また、各地域の電力会社が各々の管理の下、余剰電力を抱えている事にも疑問をもちました。
それぞれの余剰電力を総合すると相当量の電力になると思います。
もし、仮に送電事業を全国で一括管理して余剰電力をコントロールすれば、全体で今ほどの余剰電力を抱える必要がないと思います。
また、各家庭単位で電力供給をリアルタイムでコントロールできれば、仮に供給量に限界が来た時でも先日関東地区であった計画停電のような杜撰な方法を取らなくても済むはずです。
  
今までの電力会社の方針は、とりあえず原子力発電で安定的に余剰電力を発電する方向に進んでいたと思います。
だから、電力の使用量を減らしてもらうことは前提になく、日中を通していかに電気を使用してもらうかが前提だったのではないでしょうか?
 
スマートグリッドという言葉が世に出て久しいですが、これがなかなか進まなかった理由も原子力発電推進が大きく影響していたのでしょう。
  
先日の原子力発電所の事故は、電力に対する考え方を大きく変えました。
これからは発電量を基準にするのではなく、使用量を基準に考える時代になると思います。
「少ない発電量をいかに効率よく使用していくか?」
これをベースに効率の改善も含めて考えるのであれば、自然エネルギーの活用もそれほど困難な課題ではないかも知れません。
  
時に前提の変化は、企業の色を大きく変える事があります。
前提の基準を自社中心から市場環境中心に移すことは、マンネリ化した企業の中に何らかの変化をもたらすかも知れませんね。
  
k.yamatani