臥薪と嘗胆

最近、厳しい経済環境の中でよく耳にする言葉があります。
     
「臥薪嘗胆」
         
厳しい状況を耐え忍んでがんばると言う意味でよく使用される言葉です。
               
先日、日本美術院の同人・倉島重友さんの個展にお伺いした時、ちょうどギャラリートークが開催されていたので拝聴いたしました。
その中で先日亡くなった平山郁夫さんとの想い出話を話しておられましたが、印象に残ったエピソードとして同人に推挙された時に次のお言葉をかけられた事を話されていました。
      

「臥薪嘗胆してがんばれ!」
        
同人と言えば、日本美術院の序列で言えば最高位の存在です。
普通であれば、「臥薪嘗胆してがんばったな!」となるところなのに「これから臥薪嘗胆しなさい!」と言わんばかりのお言葉に一瞬戸惑ったそうです。
       
臥薪嘗胆とは、呉と越の王がお互いに復讐に燃える中で屈辱に耐え忍ぶ姿を表現した故事ですが、この歴史には続きがあります。
お互いに復讐に燃えた呉王・夫差と越王・勾践は、それぞれが目的を達成した後に有頂天になり滅ぼされてしまうのです。
                 
そう考えると臥薪嘗胆とは、何かを達成した時(もしくは、流れがうまく行っている時)に行わなくてはならない事なのかも知れません。
厳しい時や辛い時に臥薪嘗胆するのは当たり前。
そんな時に、そんな事を言っている様では先が思いやられるかも知れません。
             
「死せる孔明・・・」ではありませんが、亡くなってなお平山郁夫さんの人としての大きさを感じさせられた瞬間でした。    by keyz