TOP » 技術屋ブログ » コストか…機能か…

コストか…機能か…

鋼材選び・JIS規格

STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)と
SUS304ステンレス管の選び方ガイド

「この部品、STKMとSUS304どちらを使えばいい?」——パイプ・鋼管選びの現場でよく聞かれる質問です。両者は外見が似ていても、強度・耐食性・加工性・コストに大きな差があります。本記事では、JIS規格の観点から両素材の特性を徹底比較し、用途別の選択基準をわかりやすく解説します。

STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)とは?

STKMは「Steel Tube for Kikai(Machine)構造」の略称で、JIS G 3445に規定される機械構造用炭素鋼鋼管です。油圧シリンダー、自動車部品、産業機械、建設機械など、精度と強度が求められる機械部品に広く使われます。

STKMの主な種別(JIS G 3445)

種別引張強さ(N/mm²)降伏点(N/mm²)主な用途
STKM11A290以上175以上一般機械部品
STKM12A/B/C340〜490以上175〜275以上油圧シリンダー・構造部材
STKM13A/B/C370〜520以上215〜345以上精密機械・ロボット部品
STKM16A/C510〜590以上305〜490以上高強度が必要な機械部品
STKM19A/C590〜690以上490〜520以上高負荷構造物・特殊用途

※ A=焼きならし、B=焼きならし+焼きもどし、C=冷間引抜きなど熱処理状態を示します

SUS304(ステンレス鋼管)とは?

SUS304は、クロム(Cr)18%・ニッケル(Ni)8%を含むオーステナイト系ステンレス鋼で、JIS G 4304に規定されます。「18-8ステンレス」とも呼ばれ、優れた耐食性・耐熱性を持つため、食品機械、医療機器、化学プラント、厨房設備など衛生的環境が求められる用途に多用されます。

SUS304の主な特性:
  • 引張強さ:520 N/mm² 以上(JIS G 4304)
  • 降伏点:205 N/mm² 以上
  • 耐食性:塩水・酸性環境に強い(ただし塩化物環境では注意が必要)
  • 非磁性(磁石がつきにくい)
  • 溶接性:良好(ただし鋭敏化に注意)
STKM vs SUS304:性能レーダーチャート(概念図) 強度 耐食性 加工性 コスト優位 入手性 STKM(機械構造用炭素鋼) SUS304(ステンレス鋼)
図1:STKM vs SUS304 性能比較レーダーチャート(5段階評価・概念図)

徹底比較:STKM vs SUS304

比較項目 STKM(JIS G 3445) SUS304(JIS G 4304)
主成分 鉄(Fe)+炭素(C)
(炭素量 0.08〜0.35%程度)
鉄(Fe)+クロム18%+ニッケル8%
引張強さ 290〜690 N/mm²(種別により異なる) 520 N/mm² 以上
耐食性 低い(さびやすい)
防錆処理が必要
高い(ステンレス本来の耐食性)
塩化物環境には注意
加工性(切断・溶接) 優れる(一般的な工具で加工可能) やや劣る(硬く、工具摩耗が大きい)
重量(密度) 約 7.85 g/cm³ 約 7.93 g/cm³(ほぼ同じ)
コスト 比較的安価 STKM比 2〜4倍程度(素材・種別による)
磁性 磁性あり(磁石がつく) 基本的に非磁性(加工後わずかに磁性が出る場合も)
衛生・食品対応 不向き(さびが混入リスク) 適する(食品・医療用途に使用可能)
主な用途 油圧シリンダー、自動車部品、産業機械、建設機械 食品機械、厨房設備、医療機器、化学プラント

用途別の選択基準

STKMが適している場合

  • 油圧・空圧シリンダーのシリンダー管として使う
  • 高強度が必要で、防錆処理(めっき・塗装)が可能な環境
  • コストを抑えたい機械部品、構造部材
  • 精密な内径寸法精度が求められる部品(STKM冷間引抜品)
  • 工場内・屋内使用で結露・水分に常時さらされない環境

SUS304が適している場合

  • 食品・飲料・製薬ラインで衛生管理が必要な設備
  • 海水・雨水・薬品に直接接する配管・設備
  • 医療機器・厨房設備・クリーンルーム内の部品
  • 屋外設置で長期間メンテナンスなしでの使用を想定
  • 見た目の美観が求められる建築・インテリア用途
⚠️ 注意:SUS304は塩化物(塩水・塩素系薬品)に弱い面があります。海岸近くや塩素系薬品を使用する環境では、より高耐食性のSUS316(モリブデン添加)の使用を検討してください。
用途別 材質選定フロー 鋼管選びをスタート 耐食性・衛生性が 必要か? YES NO SUS304 ステンレス鋼管 食品・医療・屋外 STKM 機械構造用炭素鋼管 機械部品・油圧・構造
図2:用途別 材質選定フロー(簡易版)

加工・購入時の注意点

STKMを使う際の注意

STKMはさびやすいため、切断・溶接後は速やかに防錆処理(亜鉛めっき、クロメート処理、塗装など)を行ってください。また、種別(11A〜19C)によって機械的性質が大きく異なるため、強度計算に基づいた適切な種別選定が重要です。外径・内径・肉厚の寸法精度は、JIS G 3445に規定された許容差を確認してください。

SUS304を使う際の注意

SUS304は加工時に発熱しやすく、工具摩耗が早いため、低速・大きな送り量での切削が基本です。溶接時は鋭敏化(クロム炭化物の析出)に注意し、溶接後の冷却速度管理が重要です。外観品質が求められる場合は、表面仕上げ(#400、BA仕上げ等)の指定も確認しましょう。

STKM・SUS304の鋼管はエーティーケーにお任せください

多品種の鋼管をご用意しています。用途に合わせた材質・寸法選びのご相談も承ります。
まずはお気軽にお問い合わせください。

まとめ:材質選びのポイント整理

判断基準 STKMを選ぶ SUS304を選ぶ
環境 屋内・乾燥した工場内 屋外・水・薬品・食品環境
強度要件 高強度が必要(種別で調整可) 標準的な強度で十分
コスト コストを抑えたい コストより耐久性・衛生性優先
加工難易度 加工しやすい(低コスト) やや難しい(工具・技術必要)
外観・美観 防錆処理が必要 光沢があり美観に優れる

STKMとSUS304は、それぞれ明確な得意分野があります。「コスト+強度+加工性」ならSTKM、「耐食性+衛生性+美観」ならSUS304——この基本を押さえておけば、ほとんどの選定場面で迷わずに材質を決められます。

鋼管の材質選びや仕様の詳細は、エーティーケーの技術スタッフにお気軽にご相談ください。現場の条件を伺いながら、最適な材質・寸法をご提案いたします。

© 2026 エーティーケー(株式会社エーティーケー)| 公式サイト