無知は罪なり 知は空虚なり

先日、日銀の金融政策決定会合において「マイナス金利の解除」「YCCの終了」「EFTの買い入れ終了」が発表されました。発表後、連日のようにニュースで伝えられていたので耳にした人は多いと思います。

ただ、当社の社員でこの発表の意味を理解している人は、ほとんどいませんでした。一言で言うと「関係ない話」と捉えたようです。そこで、このように言いかえてみました。

「今まで銀行は余ったお金を残しておくと日銀から手数料を取られていたので、とにかく余分なお金が残らないように人や企業に貸し出す事に必死でした。だから住宅ローンの金利競争が発生したり、誰でも簡単に借金ができたんです。でも、それが終わりました。これからの銀行は手のひらを返しますよ。住宅ローンの審査も厳しくなるでしょうし、金利も上がるでしょう。企業も返す当てがなければ簡単にお金を貸してくれなくなります。でも、それが本来の銀行の姿です。」

本来の銀行の姿を知らない世代が多い中で、この転換は非常にインパクトが大きい話です。(だから連日ニュースで伝えられているのですが…)

知識は身を助けると言いますが、知っている事で先手を打てることはたくさんあります。特にトップニュースで伝えられている事は、言葉の意味がわからなければ調べて理解しておいても損はないと思います。意味をわかっても何もしなければ意味はないですけどね。

結局、「無知は罪なり 知は空虚なり 英知持つもの英雄なり」って事なのでしょう。

タイパ

タイパ」と聞くと大阪のおっちゃん達は「タコパ」の親戚かと思ってしまうのですが、全く似て非なる言葉のようです。正式名称(?)「タイムパフォーマンス」。いかに時間を有効に使うか?もしくは、やりたい事をいかに短時間で終わらせるか?これだけを聞くと素晴らしい事だと思うのですが…。

世間的にタイムパフォーマンスを意識する流れは、「時短」と言う言葉から始まった気がします。「世間的に」と言う理由は、製造業の世界では100年以上前にテイラーと言う人が時間研究をした事から始まりトヨタ生産方式などへと繋がってきているので、意外にも製造業を得意とする日本はタイムパフォーマンスの向上が得意な国でもありました。これが若者世代の生活習慣として始まったことは、非常に驚く事です。製造業的に考えると生活において生産性の向上を意識して生きているとも言えます。(向上しているかどうかは別にして…)

ここ最近、仕事においても生産現場以外のシーンでタイパを意識した行動を感じる事が多くあります。基本的にこれまでホワイトカラーの世界で意識する事は「タイパ」よりも「コスパ」でした。ですが、最近は仕事上でも何となくその立場が逆転しているような気がします。

労働時間の制約や人材不足など様々な環境変化の中で現場労働者に影響が出ていると注目される事が多いですが、実はその背景で間接部門への負担がかなり多くなっているようです。例えば、設計現場においては製作時間確保のために発生する工程の歪みが設計時間を圧縮しています。品質管理部門や積算部門も同様の状況だと思います。ここ最近の自動車メーカーの不正にもこれが背景にあったようですが、この問題は自動車に限らず全ての業界に言えることです。その結果、間接部門においては「コスパ」よりも「タイパ」を重視せざるを得ない状況に陥っているようです。

あなたは「安さ」よりも「速さ」、「情報量」よりも「効率」が重視されつつある時代の変化について行けているでしょうか?

ゲームチェンジ

先日、OpenAIが発表したsoraには大きな衝撃を受けました。

一見、製造業には全く関係ない事なのですが、これが一般的に使われるようになると対岸の火事では済まされなくなると思いした。なぜなら、これが世の中の価値観や行動様式を大きく変える可能性が高いと感じたからです。

まず、これが最初に普及する業界はCM業界だと思います。長くても15秒程度の映像のため、現在の仕様でもすぐに対応できる上に製作費の大幅なコストダウンだけでなく、出演者の様々なゴシップネタや人気の変動のリスクヘッジも可能になるので、それだけでも使用するのに十分な理由です。更に視聴者の嗜好に応じて瞬時に映像内容を改変できるようになれば費用対効果も大きくなりますし、それによるCMの費用対効果を測定出来るようになればネット広告に奪われていた市場を取り戻すきっかけになるかも知れません。

また、これまでの映像には制作時間が必要なため予め制作された映像を見るという意味で受動的にならざるを得ず、視聴と嗜好のズレを生んでいましたが、これが極力小さくなった時にどうなるのか?これまでの映像に対して受け身な状態が能動的に映像を見る(見させられる)状態へと大きく変わる可能性が高くなると思います。そして、人間の行動は視覚情報に大きく影響を受ける為、見たい情報しか見ない世界が現実とのギャップを生み出して、現実では生きづらい人を多く創り出していくかも知れません。

あまりピンと来ない人は、「マトリックス」という映画の中で人間がやっていた事が参考になるかも知れません。あくまで映画なので一つの極論だとは思いますが、スマホの登場以降大きく変わった余暇時間の使い方を考えるとあながち大きくズレているとは感じません。

そして、人々の行動パターンが大きく変わっていくと思います。(すでに変わり続けていますが…)

行動パターンが変われば、住環境や娯楽、そして使用する道具やシチュエーションも大きく変わります。

結果、製造業界も対岸の火事では済まされなくなるという事です。

2024

今年に入ってからというもの「2024年問題」というワードを耳にしない日が、ほとんどありません。ただ、個人的にはこの言葉が都合よく使われて独り歩きしているような気がしています。

一般的に2024年問題と聞くと物流や建築の問題だと感じると思います。しかしながら、実際には2024年限定で起こる問題は通信(ISDNの廃止)の問題だけです。物流や建築の問題としてあげられているのは残業規制の問題ですが、これは2019年4月(中小企業は2020年4月)に始まったもので、物流と建築が特例で猶予されている期間が終わるのが2024年だと言うだけの話です。

要は、猶予期間に解決していない業者がたくさんいるのが問題であって、夏休みの宿題をやらずに2学期の始業式を迎える人がたくさんいる事と同じです。その上でこの言葉が都合よく使われていると感じる理由は、それを正当化しようとしているように感じるからです。

その最たるものが、これを口実とした値上げです。これは単なる開き直りに近くて、小学生が「夏休みの宿題が出来ていないから授業時間を減らせ!」とか「夏休みを延期しろ!」と言っているようなものです。正直言って、この猶予期間の間に真面目に改善に取り組んでいた業者をバカにしていると思います。

もちろん適正な価格で仕事を請け負う事は重要です。これを話し合いで解決するのではなく、半ば脅迫のように「2024年問題」というキーワードを使って押し付けるのが問題だと感じています。

おそらく、この流れでは市場が委縮します。

企業同士が互いを尊重して、共に発展できる方法で解決していく事を望みます。

締め

2023年の最終営業日になる12/29に毎年恒例の決算発表会と自己査定会を行いました。

この規模の企業で決算の内容を事細かく全社員に説明するのは珍しいと思いますが、一年間自分達がやってきた事の結果を振り返って、現在の状況とこれからの方向性を確認する上で重要な行事となっています。

もう一つの意味は、全社員による経営者の査定です。

上場企業であれば株主が目を光らせていますが、非公開企業では株主=経営者の構図が多いので曖昧になりがちです。そこで上場企業の株主の役割を全社員に担ってもらって、経営の緊張感を維持しています。

もちろん社員は決算書を読み込むプロではないので、数字を見ただけではわからない数字の意味や背景をグラフや事例を使って説明させていただくのですが、その資料作りの過程が現在の状況を知る分析にもなるので一石二鳥です。

それが終わった後に各社員が一年の振り返りを兼ねた自己査定を行いました。

その後は大掃除をしてから納会を兼ねた忘年会へ。いつもの事ですが、各テーブルで熱い話が繰り広げられていました。あらためて上下関係なく何でも言い合える距離感が、この会社の一番いいところだと感じました。

今年も一年なんとか乗り切る事が出来ましたが、年末には来年の厳しさを予感させる様々な悪いニュースが飛び込んできました。更に来年は2024年問題と言われている運送業界と建築業界の混乱が予想されますので、よりいっそう気を引き締めて挑まなければいけません。

なにはともあれ、今年一年たいへんお世話になりました。

来年もよろしくお願い申し上げます。

パラレル企業

先日、当社の業務システムに大きな変更がありました。

もともとは災害時のBCP対策として進めていた事ですが、11月からリアル空間とクラウド空間の間で業務用データベースが同期保存されるようになりました。以前から固定電話のシステムや業務管理ソフトの運用はクラウド上で行われていたので、今回のデータベースの同期化によりクラウド版のエーティーケーが完成しました。

そして、これにより事務所内作業のほぼ全てが場所と時間から解放されました。特に影響が大きいのが営業業務です。外出先からでも電話の応答、FAXの送受信や過去の受注履歴の確認、現場の加工予定や加工履歴を確認する事が可能になったので、その気になれば全く会社に来なくても仕事が出来る状態になりました。

ただ、おそらく今まで顔を突き合わせながら仕事をしていた人達が、完全にこの環境を使いこなす事は難しいと思います。なぜなら、今の環境が今の仕事の進め方にフィットしているからです。それがうまくいっていないならともかく、特に問題があると感じていない状態で敢えて環境を変える事はやらないでしょう。

したがって、この新しい環境を有効に活用するには、新しい事業や新しい人材を前提にする必要があるでしょう。そして、そこに出来上がるのはリアル空間とは全く別の動きをするパラレル空間に存在するエーティーケーです。

このパラレル企業が、今後どのような成長を見せるのかが楽しみです。

知ることのリスク

8月は戦時中に亡くなった人達を追悼する行事が多いので、一年の中でも平和を意識する機会が多いと思います。

私の場合は広島に投下された原爆や太平洋戦争で親戚を数名亡くしているので、毎年、何かしらの思いを感じながらその日を迎えます。それも2世代前の出来事だからこそなのかも知れませんが…。

現在、ロシアとウクライナの間で激しい戦争が行われています。日本にはメディアから伝わる情報しか入って来ないので、そこで暮らす人達の情報は深く伝わっては来ません。そのせいなのか、現場は凄惨な状況になっているはずなのですが、どこか別の空間で起こっている事のように感じてしまうのです。もしかしたら、戦地に近いヨーロッパですらそうなのかもしれません。

今の時代はメディアからの情報だけでなく、SNSやインターネット等など様々な視点からの情報が手に入ります。ただ、何かを通した情報には何らかのフィルターがかかっている事は自覚しておいた方がいいと思います。増して、フェイクNEWSがどこに存在しているのかわかり難くなっている現在は、なおの事です。

インターネット環境は、人々の「知る権利」を拡大しました。その恩恵にあずかっている人は世界中にたくさんいると思います。ただ、その結果、知らなくてもいい事まで知ってしまう世の中になってしまいました。

果たして、それはいい事なのでしょうか?

もしかしたら、自分が手の届く範囲の情報しか知らない方が、いろんな意味で平和なのかも知れません。

2025

ある特定の業種の方々の中では非常に注目されている問題であるにも関わらず、世間一般的にはあまり知られていない問題として「2025年の崖」というものがあります。

これを聞いてピンと来た人は、おそらく何らかの対処を考えている方だと思いますが、ほとんどの人にとっては「何の崖?」と言った反応ではないでしょうか?

これは経済産業省の「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」で提示された言葉です。

今の世の中、あちらこちらでDXという言葉が飛び交っていますが、実態はただのデジタル化に留まっている企業がほとんどだと感じます。

DXとはデジタル化をきっかけにシステム全般を再構築して新たな収益構造を創り出すことです。要するに既存のシステムの革新とセットで考えるべき事なのですが、それをできる人材が乏しいため結局はただのデジタル化で満足して、何の変革も生み出せていない企業が多く存在します。

そして、そのリミットが2025年に訪れると言われています。

弊社でもここ数年、様々な工程をデジタル化してきました。正直、これだけでもお腹いっぱいになっている人もいると思うのですが、本格的なDXはこれからです。

その先には全く違う景色が広がります。

現時点で、それが見えている人はほとんどいませんが…。

ジェットコースター

少子化の影響が学校経営に直接影響を与えるようになってきました。

2023.6.19 日本経済新聞「余る大学、2040年に「240校」 想定超す少子化が迫る淘汰」

いずれこのような事態になる事はわかっていた事なので、それほど驚く記事ではありませんが、あらためてこのスピード感で自分達が関わる市場も縮小していくことを考えると恐怖すら感じます。

当然、大手製造メーカーはメインの市場を海外へ移すので、生産を国内に限定する事にはリスクを伴います。その結果、国内で製造するものは他の地域よりも「安く・安定的」に作られる物に限定されていくでしょう。そこには賃金や人材確保の問題も絡んでくるので、負のスパイラルが加速していくと思われます。

とは言え、悲観ばかりしていてもしょうがないので、自分達が生きている時代はそんな時代だと割り切って、その環境を楽しむぐらいが丁度いいのかも知れません。

今まで日本人が経験したことがない急激な市場縮小の時代を体感できる幸せもあるかも知れませんよ。

ジェットコースターのようにレールは有りませんけど…。

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